2009年12月26日土曜日

種の自家採取、その1

野菜づくりを始めて、まず最初にやってみたいと思ったのが、タネ取りです。

自分が育てた野菜から種をとって、また次の年にその種を蒔く、いのちが循環しているのを実感します。

タネを蒔きながら、私たち人間にも思いを馳せていきます。

連綿とつながる自然の流れの中で、私たち自身も自然の一部として存在しています。

遥か昔の祖先から引き継いできたバトンを両親から受け取り、そして精一杯走りながら、子供達にまたバトンを渡していく、タネの採取は、そんな思いを抱かせてくれます。

就農のため、というよりは、いわば自己のアイデンティティーを確認するためにやっているようなものです。

ところで、プロの農家の方は、あまり自分でタネを取ることはないようです。

だいたいの方は市販のものを買っているようです。

これには理由がいくつかあります。

一つには、畑が長時間空かないからです。

例えば、ニンジンのタネを取ろうと思えば、夏から秋にタネをまき、冬越しさせて晩春ごろタネを取ります。

単に収穫するだけに比べて何ヶ月も余分に時間がかかります。

冬に収穫してしまえば、春には別の作物が植えられるのに畑が勿体ないです。

第二には、交雑を避けるのが難しいです。

交雑とは、異なる品種同士で交配してしまうことです。

そうすると、元の性質が失われてしまいます。

特にアブラナ科の野菜では、異なる種類の野菜の間で交雑が起こるので、注意が必要です。

以前、私がやった失敗では、カブの種を取ろうと思っていたら、ハクサイの花粉がどこからか混ざっていたようで、変なタネができました。

そのタネを育てると、カブほど根が大きくなく、ハクサイほど葉っぱが大きくないものができてしまいました。

第三に、そして最も重要な理由は、買ってきたタネは揃いがよく、品質が一定で販売に有利だからです。

多くのタネは、F1といって、異なる品種を掛け合わせて作ったタネです。

これは、一般に雑種強勢といいますが、純系のものよりも生育が強健となります。

また、生育も揃うので管理がしやすいという利点もあります。

一斉に同じ品質のものが収穫できるので出荷もしやすくなります。

ただし、F1の野菜からタネを取ると、元の親と全く異なった性質の子供ができたり、場合によってはタネ自体採れなくなったりします。


F1とは逆に、遺伝子が近いもの同士を交配させていくと生育は弱くなっていきます。

これは雑種強勢の反対で自殖弱勢と言います。

人間や他の動物でも同じことです。

氏素性のよい家柄では、結婚するときに相手の家柄も気にするので、結果的に近い家系の間で結婚することが多くなり、遺伝子の多様性がなくなって弱くなりがちです。 

我が家も(気持ちは)氏素性がよいので、自殖弱勢にならないか心配したのですが、実際は雑種強勢だったらしく、子供達は比較的元気に育っています。

話はそれましたが、雑種強勢を利用したF1に対して、一つの品種を選別してきたものを固定種と言います。

固定種は、上述したとおり純系に近づけると自殖弱勢により弱くなってしまいます。

従って、これを防ぐために別の系統で育てた種と交配させます。

例えば、別々の種屋さんで育てた同じ品種の種同士を交配させる、といった具合です。

このように、固定種は原理的に純系になりすぎることを嫌うので、どうしても生育や品質にばらつきが生じます。


以上のような理由でF1品種が多いのですが、最近では風向きが変わりつつあるようです。

F1品種よりも固定種の方を好む消費者が増えてきているようなのです。

理由を想像すると、近年の科学技術に対する不信感でしょうか?

人工的なF1種よりも昔ながらの固定種の方が安全、という感覚です。

また、インターネットにより色んな情報が容易に手に入るようになったことも大きそうです。

こういったことで自家採種野菜の競争力が高まってきています。

ただし、この場合の前提は直売所やインターネットでの直接販売です。

農協出荷やスーパーでは、どうしても均一性を求められるので、現状では難しそうです。

ということで、タネの自家採取について知っておいても損はないと思われますので、勉強中です。

その2に続く

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