2011年5月27日金曜日

海外の不耕起栽培事情 その1

ここのところ、米ぬか、木酢液といった農業資材の話が続きました。

同じような話が続くと飽きてくるので、今回は全然別の話題を取り上げてみたいと思います。

今回のお題は、不耕起栽培の海外事情について、です。

私も、不耕起、もしくは耕起を減らした栽培を行っていますが、なかなか上手く行かない面も多く、難しさを実感しています。

何と言っても、雑草の防除がやはり大変で、さらに植物の生育も遅めの気がします。

でも、自分の時間、お金の節約の観点から、不耕起栽培の魅力はやはり捨てがたいです。

そこで、外国の粗放的な栽培でどのように不耕起栽培が行われているかを調べることにより、自分の栽培にも応用しよう、というのが今回の趣旨です。

で、今回、まず不耕起栽培の全体感を概観したのちに、次回に主に技術的な面について述べようと思います。

最初に、不耕起栽培の現状ですが、日本では普及率は微々たるもののようです。

これに対して、最も普及が進んでいるのが米国、次いでブラジル、アルゼンチン、カナダ、オーストラリアの順に不耕起栽培の耕地(?)面積が多くなっています。

なぜか、歴史の浅い地域が多く、面白いですね。

これに対して、アジアやヨーロッパ、アフリカではあまり普及していません。

ヨーロッパの中ではフランス、アジアの中ではインドでの普及率が高いようです。

これらの中で、最も普及している北米について、詳しく見てみます。

もともと、北米でも昔は広大な農地を大型トラクターでさかんに耕起していました。

しかし、そのうちに農地の土壌浸食が問題となってきました。

耕すことにより、土壌の有機物が分解されて土が痩せていくとともに、表土が露出して風で飛ばされたり、雨で流亡してしまうためです。

そして、1930年代に激しい砂嵐が米国中西部を襲い、その土地が深刻なダメージを受けました。

これを機に、土壌の保全に対する取り組みが始まり、政府の補助金などによる保全の支援も行われるようになりました。

その後1960〜80年頃に、耕耘回数を従来よりも減らした保全耕起や、全く耕耘しない不耕起栽培のための各種の技術開発がなされていき、これらの栽培方法が広まって行く元となりました。

現在では、米国の農地の約半分が、こういった保全耕起の農地となっていると言われています。

余談ながら、お隣のカナダの電力会社では、米国の不耕起栽培の農家から二酸化炭素排出権を購入したりしています。

これらの事からわかるように、普及した背景には、不耕起栽培を支える技術革新と、政策による補助が必要です。

逆に普及していない地域では、これらの補助政策がなかったり、ハード面、ソフト面、両面での整備が不十分です。

具体的に言えば、ハード面では、遺伝子組換え作物の種子、除草剤、不耕起栽培用の農業機械が普及のキーとなります。

また、ソフト面では上記ハード面に対する心理的抵抗や、不耕起栽培の技術修得の困難性等が挙げられます。

次回は、これらの詳細について、述べていきたいと思います。

海外の不耕起栽培事情 その2に続きます。

参考にした本

河本桂一編 エネルギー・水・食糧危機 (別冊日経サイエンス 171)


・・・この中の一章を割いて、主にアメリカの不耕起栽培事情について書かれています。

現代の米国農業の技術開発の成果を紹介する形で肯定的に論じられています。

木村康二 アメリカ土壌侵食問題の諸相 農林統計協会


・・・お硬いイメージの本ですが、たまにはこのような本を読んでみるのも面白いものです。

上の日経サイエンスとは反対に、現在のアメリカ農業を否定的な観点から述べています。

同じ現象を扱っていても、正反対の評価になって面白いです。

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