農業として野菜栽培を始めるとすると、まず最初に単一品目を専作するか、多品目を少量で栽培するか、という選択肢が生じます。
単一品目の場合は、大規模化、機械化とセットで効率化を図ることがよく進められます。
面積が小さい場合でも、例えばトマトやイチゴのような高付加価値品をハウスで養液栽培する、といった方法での専作化は多いです。
一般に、専作するほうが効率化できて収益があがりやすく、多品種少量生産では儲けにくいといわれることが多いです。
しかし、多品種少量生産にもメリットは多いです。
まず、多品種作れば、その分自給できる野菜が増えます。
これは金額的にも馬鹿になりません。
例えば、原価10円の野菜を20円で出荷して、小売り店で30円で売られるとすると、出荷したときは20−10円=10円儲ける計算となりますが、自給した場合は30円ー10円=20円の出費が抑えられる勘定になります。
しかも、通常、自分で食べる分は、形がくずれて売れないような野菜を使うので、実際は30円丸々出費が抑えられたことになります。
さらに、ご近所付き合いで、余った野菜をやり取りすることにより、タダでもらえる野菜のバリエーションも増えます。
ただし、ご近所で余り仲良くなりすぎると、勝手に持っていかれて、食べた後に事後報告、ということもありますが、これはご愛嬌ということで・・・
他に、新規就農者にとっては、色んな経験が積めるという非金額メリットも大きいです。
農作物は、基本1サイクル1年なので、専作だと1年に1回づつしか経験が増えませんが、多作だとその何倍も経験できます。
例えば、多くの果菜類や豆類では、花芽が出来たりツボミが出たりと栄養成長から生殖成長に切り替わる時に病気が出やすいですが、そこで石灰を追肥すると病気が抑えやすくなります。
こういった勘所が、色んな野菜を育てていくうちに身に付いてきます。
さらに、輪作による生産へのメリットもあります。
専作ですと、どうしても忌み地対策で土壌消毒に手間とお金がかかりますが、多作ですとその必要がほぼなくなります。
それどころか、前作の残さを鋤き込むことにより、肥料を節約することも可能です。
ついでに、鶏でも飼っておけばエサ代ただで卵が取れて、鶏糞肥料までできてしまいます。
このように多作ですと本来なら廃棄するようなものでもうまく使い回して費用を節約できるのがいいところですね。
一方、多作のデメリットも勿論あります。
色んな作物を同時に栽培するので、農薬を一気に散布する、ということが出来ません。
植物の種類により、使用可能な登録農薬は事細かく決められているので、なかなか不便です。
また、大型機械を入れるにしても狭くて取り回しできないこともあるでしょう。
ただ、これらにしても、例えばピンポイントで虫の発生する場所だけに農薬を落とし込むとか、小型管理機などの農機を上手く使いこなすといった対策で、更なるコストダウンもにもつながります。
要はバランスが大事で、主要作物をしっかり作りつつ、その隙間を補助的に多数の作物で補う、といった考え方がいいのではないかと思います。
参考にした本
農文協編 成功する小農経営 農文協
青木恒男 野菜のシンプル栽培 農文協
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